- 2026年3月19日
「インスリン注射を始めたら一生やめられない」は本当?
1. はじめに:インスリンへの「誤解」
インスリン治療と聞くと、重症感であったり、治療の最終手段のようなイメージだったりを抱かれる方も多いかと思います。
結論から申し上げますと、「インスリン注射は、一生続けなければならないとは限りません」。
インスリンは決して「最後の手段」ではなく、「膵臓を休ませることができる重要な治療法」です。
2. なぜ「やめられる人」と「続ける人」がいるのか
インスリン治療をいつまで続けるかは、糖尿病の種類や膵臓機能の状態によって異なります。
● 一時的な使用で済む場合(離脱の可能性がある方)
- 「糖毒性」の状態にある方: 著しく血糖値が高い時は、高血糖自体がインスリン分泌障害やインスリン抵抗性を悪化させ高血糖がさらに増悪する悪循環になります。一時的に外からインスリンを補い膵臓を休ませてあげることで、インスリン分泌能の保護・回復が期待できます。
- 手術前後や感染症の時: 経口血糖降下薬は手術の前後で中止が必要になり、インスリンを中心とした血糖管理への切り替えが原則です。体へのストレスがかかる時期だけ使用し、落ち着いたら元の経口血糖薬での治療に戻ります。また感染症では高血糖が増悪し、重症化しやすく、重篤な感染症の急性期ではインスリンでの厳格な血糖管理を必要としますが、回復期で経口摂取が安定していれば元の経口血糖降下薬での治療や食事療法へ切り替えができます。
● 継続が必要な場合
- 1型糖尿病の方:病態としてインスリン分泌が枯渇するためインスリン治療を継続する必要がありますが、一人ひとりの生活に合わせて、工夫を繰り返していくことが大切です。
- 2型糖尿病で、インスリンの分泌能が低下している方:2型糖尿病であってもケトーシスや代謝失調症状などインスリン依存状態が疑われるときにはただちにインスリン療法が必要です。年齢とともに内因性インスリン分泌は低下する傾向があり、分泌能が低下したインスリン依存状態においてはインスリン治療が必須となります。
3. インスリン治療を早く始めるメリット
早めにインスリンを導入することには大きなメリットがあります。内因性インスリン分泌能が温存している「早期」から積極的に導入することが効果を最大に活かすポイントです。
- 膵臓β細胞を守る: 自分の膵臓を休ませることで、機能を温存できます。糖毒性による膵β細胞機能不全やインスリン抵抗性が改善することが報告されています。
- 合併症を防ぐ: 血糖値を速やかに、かつ確実にコントロールできるため、良好な血糖管理を継続することで合併症の進行を抑制できます。

4. 当院からのメッセージ
インスリンは「最後の手段」ではなく、「膵臓の機能を守ることができる重症な薬剤」です。
インスリンからの離脱が治療の目標ではありませんが、一時的な使用で済む場合もあり、有効な治療の選択肢としてご検討いただくことでより納得して治療を継続いただけるものと考えています。
最近では、注射の針も非常に細く、痛みもほとんど感じない工夫がされています。また、週に1回の注射で済む製剤も登場しており、生活スタイルに合わせた治療が可能です。インスリンの注射回数についてや継続が必要かどうかなど、お悩みがあればご相談ください。
5. まとめ
- インスリンは一時的な使用で離脱できる場合があります。
- 治療が必要な場合は早く始めるほど、効果を最大に活かすことができます。
- 一番大切なのは、納得のいく方法で、前向きに治療を継続いただけることと考えています。